快楽堕ちした女優の末路【厚木で5時】

結城まきは、人生のすべてを“女優”というたったひとつの夢に注いできた。
舞台の光を浴びるために、仲間より早く現場入りし、台本が擦り切れるまで練習し、
誰よりも努力し続けた。
――なのに、どうしても届かない“最後の一段”があった。

「何が足りないの…？」
苦悩の末に気づいてしまう。
業界では、実力や努力だけでは超えられない壁が存在するという現実に。

そのとき彼女は初めて、“自分の身体までも仕事の一部として使う”という
覚悟を試される場所に立つ。

最初は女優としてのプライドをまとい、
“演じるように”振る舞えると思っていた。
しかし、予想外に心が揺れ、
自分が知らなかった“弱さ”と“感覚”に触れてしまう。

それでも、彼女は逃げなかった。
むしろその経験を、
「女優としての武器」として受け入れようとしてしまう。

その選択は、彼女の未来を大きく変えた。
監督やスポンサーとの「打ち合わせ」をこなし、
夢のために心も身体も擦り減らす日々。
次第に、“仕事としての境界線”が曖昧になり、
自らの感覚が仕事を飲み込んでいく。

「私…いつからこんな風になってしまったんだろう…」

まるで深夜アニメのヒロインが
ゆっくりと堕ちていくような、
美しくて痛々しい転落の物語。

成功の階段をのぼるたびに、心のどこかが摩耗し、
気づいたときにはもう前の自分には戻れない。
そんな“切なさと凄味”が同時に漂う前編となっている。

読後には、
「夢を叶えるって、こんなにも残酷なの？」
と胸がざわつくはず。

芸能界の光と影、
才能と欲望、
プライドと崩壊。

そのすべてが詰まった濃密な1冊です。