八百万★社中 近くのお弁当屋さんにパートに出た母高原裕子(42)が後ろめたさで潰れてしまいそうなんです。【八百万★社中】
シリーズ第8作目となる本作は、これまで積み重ねられてきた出来事の“結果”に真正面から向き合う、内省色の強い一編です。主人公・高原裕子は、日常の延長線上で選んできた行動の数々により、心と身体の乖離を強く意識する段階へと踏み込んでいきます。本作の主軸は、外部からの出来事そのものよりも、「後ろめたさ」「罪悪感」「自己嫌悪」といった感情が、静かに、しかし確実に彼女を追い詰めていく心理過程。理性では拒みたいはずの状況と、身体が覚えてしまった感覚とのズレが、日常生活の中でじわじわと重くのしかかります。家族を想う気持ちが強いからこそ、その葛藤はより深く、読者にも息苦しさとして伝わってきます。シリーズを通して描かれてきた“普通の主婦の日常”は、本作では完全に戻れない場所として描写されます。それでも裕子は思考を止めず、崩れそうになりながらも、自分がどこへ向かうのかを必死に見定めようとします。この「壊れそうで、まだ壊れきらない」均衡点こそが、本作最大の読みどころと言えるでしょう。
